上海の老房子

FASICART
2013.10.05

2012 年 4 月、上海の老房子 ( 歴史的建造物 ) を改修したセレクトショップ「Fasicart」がオープンした。

敷地は、上海の新しいファッションエリアで代官山のような雰囲気である。夜になると高級外車がずらっと並ぶようなキラキラと眩しい通りだが、一本裏の路地には洗濯物が干してあるなどいかにもローカルな風景が広がっている。そして、ここは数日おきに新しいお店が開店している。半年後には通り全面がブランド品で埋め尽くされるだろうと想像出来る通りだ。上海のファッション通りにおいて最初に空間を設えてしまうことなんてほとんど意味はないと考えた。そこでオープン時が最も鮮やかで時間が次第に古びていくような店舗ではなく、時間が経てば自然に、オーナーや馴染みの客、地元の人のあいだで居場所が共有されていく老房子というタイポロジーから仕掛ける社会構築の基盤のようなものを目指した。

まず建物脇のローカルな空間に接続する路地と同じくらいの大きさの額縁で、老房子のボリュームに孔を穿った店構えとした。地元民も自然に歩いて入って来れるような雰囲気を持つ。この額縁は風水に従い外に対して八の字に開く断面をしている。また、店内はディスプレイされるものは洋服に留まらず、映像やアート、期間限定の他社ブランドなど多岐に渡るため、それらに対応する必要があった。ようするに最終的に様々な種類のもので埋め尽くされるのだろう。そこで老房子に対し、残す部分(黒いレンガ造の壁)/オーナーに委ねる部分(白いキャンバス)の二つの領域を切り分けた。そこに黒く塗られた階段や天井裏が横断して行く。

つまりフロアを昇り降りする際には、老房子が内在する古い時間の流れる暗い空間と、全く新しいコンテンツに埋め尽くされた明るい空間を行ったり来たりすることになる。さらに、内部は 3 階建ての細長い店舗空間だが、最上階を売り場ではなく顧客や地元 の人の居場所となるようなラウンジとし、エントランスの大きな孔から人々を招き入れる。 オーナーは使い勝手や訪れる人々の反応を見ながら、この空間に棚やカウンターを作ると いったカスタマイズを施して行くだろう。

めまぐるしく変化を遂げる上海、歴史的建造物としての建築、ローカルな路地、また新 しいオーナーが作る空間。それらが内在するそれぞれのリズムを吸収する余白であり、単なる店舗設計を超えた小さいながらも社会構築という方針の設計である。

設計 : 山道拓人 + 亀井聡 + 西村萌 運営 Pubson.Inc

th_黒レンガ1-1

th_facade3

th-front

th_一階ポーチ2

th_壁

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