ボールトの家

House of Vault
2016.06.22

躯体をなぞる天井の意匠

天井の意匠は、現代においてはプランニングやプログラムとはある程度切り離されているように感じる。

 

「天井剥がしっぱなし」が用途を問わずに、あるいはリノベーションや新築を問わずに手法として定番化したことからもそれは明らかである。切り離せるから外してしまい、躯体や天高を、意匠として生かすわけである。

 

このプロジェクトは、マンションのリノベーションプロジェクトである。断熱性能や遮音性能を考えると、きちんと仕上げつつ、躯体を別の形で生かす方法はないだろうか?と、そう考えることから始めた。

 

施主の要望として、この場所で家族以外の人々が集まることや、けものみち、のような自由な生活導線が求められたために、おおらかな回遊性を持つ大きなワンルームとして設え直すことを考えた。

 

まず天井や不要な雑壁を取り除いた。

 

そのときに現れてしまう梁型をスムーズにつなげるように天井を仕上げると、プロポーションやサイズの異なる三つのボールトが現れることがわかった。梁の高さがわずかにどれも異なるために、揺らぎを持ったボールトが三つ並ぶことになる。

 

このボールトは、通常のケイカル板を割いて、二重に貼っている。その曲げに対する反発力によって、既存のラーメン構造に対して、張り付くような方向に広がろうとするので、非常に強固な曲面を構成することができた。

 

敷地は斜面地の途中にあり南側の住宅地に景色が開けているので、日中の差し込む強い光からの陰影を生むような空間をイメージし、珪藻土のザラザラとしたテクスチャをボールトに与えた。

 

また、既存の柱型や窓の配置をトレースするように家具を設計をし、光を各所にためるようなことを考えた。

 

特に玄関から一番遠い壁面の家具は、文庫本から押入れサイズまで奥行きが変化する斜めの線を持つ。ボールトと壁が交差するような不思議な状態が、空間の回遊性と相乗効果を生む。

 

さらに、暗くなってからは天井全体を人工照明で光らせて、調光と調色機能を持たせることで、様々な人の集まり方に対応することを考えた。建具と照明を組み合わせれば、食事室と保育室、家族とゲスト、といった空間の使い分けも可能になる。

 

躯体に対しての天井や家具といった意匠の役割を少し拡張できた気がしている。

 

施工:月造

設計:ツバメアーキテクツ

照明シミュレーション:パナソニックエコソリューションズ社(和田遼平)

竣工:2018年1月

th_kth-washitsu-002kth-interior-fth_kth-001-Originalkth-constructionth_kth-dog2th_kth-interior2-th_kth-ceilingphoto by TSUBAME architects