浅間温泉の旅館再生プロジェクト onsen hotel OMOTO

HOTEL renovation project "onsen hotel OMOTO"
2018.07.15

リノベーションの全体最適と部分最適

ツバメアーキテクツでは新築以外にもホテルや福祉施設など、いわゆる施設建築の改修も度々取り組んでいる。古い施設を再生するにあたり、二つの水準に分けて設計に取り組むと良いのではないかと最近考えている。

 

防水・構造・ラウンジをはじめとする共有部など施設全体のあり方に関係する水準と、各居室などの個別で部分的な要素に関係する水準だ。今回のプロジェクトにおいては前者で全体最適、後者においては部分最適を行うように取り組むことにした。

 

まず、今回のプロジェクトにおいては、オペレーションやイメージを抜本的に変えるためにここを訪れる人が必ず通る1Fのラウンジを中心にやりかえた。今回のタイミングで大きく舵を切るホテルのあり方や経営方針の転換に対応し、それを表現する「全体最適」としての設計と言える。地域にお金を落とすことを意識し、お土産コーナーなど付加的な機能や要素は全て無くした。そのかわりにソファーゾーンなどを増やし、子連れなどでも来やすいようなエリアを拡充した。床材など大きな面は、清掃のしやすさや、周辺の町のコンテクストからを決定した。

 

そして、以前まで居室は五月雨式に補修に入るなどしていたために、我々が関わる時点でも綺麗な部屋と、経年劣化した部屋が混ざっていた。もっと解像度を上げて眺めていくと、部屋は綺麗だが特定の壁だけが汚れていたり、部屋は汚いが照明器具などは使えそうだったり、と状況は部屋ごとに異なっていた。また、シャワーを浴びた後に濡れたタオルを欄間にかけてしまいその脇の壁が汚れる、東よりも西向きの部屋の方が障子の劣化が進んでいる、など人間や自然の共通した振る舞いもたくさん発見できた。坪いくら、という考え方で居室全部を同じようにやりかえてしまう(全体最適)とコストが跳ね上がるし、特定の振る舞いを見逃すとまた同じように汚れることになる。したがってここでは全ての部屋に大して「診断書」を作成し、部屋ごとに床・壁・天井・照明・設備などの仕上げ表を個別に書くことで(部分最適)、居室の環境改善にかけるコストを約3分の1くらいに抑え持続性を向上するという方針をとった。もちろん予算やスケジュールが確保できる場合は、部屋の単位においても全て抜本的にやりかえられるが、そうでない場合、部屋が反復するタイプの施設建築においては、この方法は有効だと思う。

 

この方法は、全体の位置付けや人間や自然の振る舞いの反復を観察すると言う意味で、まちづくりやフィールドワーク的とも言える。

 

運営:株式会社WAKUWAKU浅間温泉
設計:ツバメアーキテクツ
施工:守谷商会
照明シミュレーション:和田遼平(パナソニックライフソリューションズ社)
写真:長谷川健太
竣工:2020年6月
web:onsen hotel OMOTO

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