アール天井の家

仕上げから考えるズレとスケ

リノベーションは、その設計の過程において「ズレ」と付き合うことになる。竣工図と実際の建築の寸法が異なっていたり、解体後に予想だにしなかった物体が発見されたり。

 

本プロジェクトは年配夫婦が暮らすためのマンションリノベーションである。既存の間取りでは多すぎる部屋を減らして、ゆったりと暮らしていくための広々とした家を構えるという目標が設定された。

 

最初に書いたように、壁を間引いていきワンルームにするつもりが解体後、部屋同士の段差が発見された。また部屋同士が繋がり新たな視点を獲得すると、当初気づかなかったカーテンの開閉装置など様々な物体が視界に入ってきた。

 

ここではそういった段差の解消・装置の隠蔽・光や音の流れの調整・使い方に応じたスケールの設定などをアール天井を駆使して行い、空間の質に転換しようとしている。

 

さらに、既存の空間にはなかった想定がいくつか施主から要望された。そう言った想定に応えるために、新規に設計する什器類は建築に埋め込まずに、建築から少し独立した意匠を持つものとして設計した。将来的に、さらなる改変が起こる可能性や、施主以外の人が使う可能性を考えた結果である。広々と再構成される空間に仏壇、趣味の作業台などの新しい物体が暫定的に現れることになるので、存在感を調整するためにいくらか透けるような素材とした。例えば廊下の扉や、扉の並びに置かれる収納はラタンで構成した。さらに、その向かいにおかれる仏壇はラタンとするとインパクトが出過ぎるために、金色のパンチングメタルとし、似せつつも印象を変えている。隣り合う素材同士は似せたりズラしたりを繰り返し、大らかな全体を構成し、改変を許容するようにデザインしている。

 

きちんと全体を仕上げなおしながらも、ズレとスケを駆使することで、既存建物や環境の特徴を際立たせるようなリノベーションならではの設計を模索している。

所在地:東京都世田谷区
用途:住宅/改装
延床面積:103㎡
設計:山道拓人、千葉元生、西川日満里 、鈴木志乃舞/ツバメアーキテクツ
施工:月造
施主:個人
竣工:2020
写真:長谷川健太