蔀戸の家

距離をチューニングする窓

木造住宅の改修。父が一人で住む実家に娘夫婦が一緒に暮らすことになった。夫婦が暮らす部屋に設けられた通りに面したボウウィンドウは西日が強いとの理由からカーテンで締め切られ、閉鎖的な環境になっていた。この窓を大きく開け放つことができれば、街の風景を楽しみ、風や光を取り入れ、街の気配を感じながら暮らすことができる。もっと開放的に外の環境と関係を持てるように、住い手が閉じたり開いたり、街との距離を自発的に調整することができる開口部を考えた。

 

 

断熱性能の高い木製ペアガラスのすべり出し窓を外側に、木枠に透明度の低いFRPを打設した蔀戸を内側に、収納家具と一体的に設える計画とした。すべり出し窓と蔀戸を開くと、軒下のような空間が現れる。そこに、ベンチを設えて窓辺から街を眺められるようにした。FRPの障子は反射率が高く、開いた時には通りの風景を室内に引き込み、閉じたときには、直射日光を遮りながらやわらかい光だまりを室内につくりだす。街からは視線を遮りながらも蔀戸の向こうに人の気配を感じさせる。

外との距離をその時々の環境によって住い手が調整できるような開口部があれば住宅はもっと街に開かれていく。

所在地:神奈川県横浜市
用途:住宅/改修
規模:木造2階建
延床面積:137㎡
設計:千葉元生、山道拓人、西川日満里/ツバメアーキテクツ+澤田航
施工:TANK
竣工:2015.3
写真:長谷川健太
掲載:住宅特集 2015年12月号