須坂市子育て就労総合支援センター bota

駅前に余白をつくる

地元ケーブルテレビ局グーライトが運営する須坂市子育て就労総合支援センターの計画。

長野電鉄須坂駅前のテナントビルのワンフロアをリノベーションして作ることになった。

ローカル線の駅直結の建物という好立地である一方で駅前広場などがなかった。

そういった状況に対し、人々が集まれる余白を用意するということと、撮影技術・料理・起業・子育てなどのスキルをサポートするプログラムを用意するということの、二つの条件をテナントビルの中に相乗的に両立させるために、入れ子状の空間構成を考えた。

中心にすえたホールは、角が取れた巨大な吹き抜けを持ち、不思議な奥行きをもつ。その時々に応じたコンテンツや活動によって異なる雰囲気で満たされる。角が取れた形は、北信濃地域でみられる基礎や擁壁の積み石”ぼたもち石”にも似ていて、そこから施設の名称はbotaに決まった。ホールには、スタジオの資材置き場を模して、様々な使い方を喚起する段差と遊具のような箱が、積み重なっている。普段の居場所や、子供たちの遊び場、ライブステージなど、さまざまな役割を担う。

また、ホール周囲を4Kスタジオやコワーキングスペース、カフェ、キッチンスタジオ、子育て支援センターなどが取り囲みながら街と接点を持つ。それぞれの機能と連動して、明るく白い吹き抜けのある中心から、放射状に周囲へと落ち着いた明度の低いスペースへグラデーショナルに変化させた。ルーバー天井は歩き回ることで見え方が変わるように片面に色を与えている。

この施設がぼたもち石のように地元住人や地元の企業の実践を下支えし、駅前の新しい風景を作っていくことを期待している。

所在地:長野県須坂市
用途:子育て就労総合支援センター
設計:ツバメアーキテクツ
チドリスタジオ
中嶋建築設計事務所
サイン:Takubo Design Studio(ブランディング・サイン計画)
協力:サイン制作(株式会社飛騨の森でクマは踊る)
照度シミュレーション(遠藤照明 林沙紀)
施工:須坂土建工業株式会社
施主:須坂市
運営:株式会社Goolight
竣工:2022
写真:長谷川健太