やわらかい天井の保育園 1&2

肌理の勾配を持つ天井

天井の造形に特徴を持つ保育園にすることを考えた。

 

というのも一般的なテナントビルに、インテリアのデザインのみで保育園を作る場合、どうしても既存の躯体や採光条件などによって、平面形はほとんど決まってしまう。そこで天井で動きを作ることを考えた。

 

認知心理学者ギブソンの議論において、人は視界に入る情報の肌理によって空間を立体的に把握するといわれている。ここではうねる天井で光の濃淡を作るだけでなく、照明器具や感知器なども「肌理の勾配」の中に位置付けようとしている。結果的にタコの吸盤のように動きを感じさせる印象になった。子供たちが、踊ったり走り出したり、思わず身体を動かしたくなる空間になっただろうか。

 

また二園同時に設計が開始したので、天井のうねり具合を変えている。比較的大きく平面が確保できる「1」では端部を緩やかにフィレットさせたおおらかな天井とし、平面形が歪な「2」では天高も低くルームエアコンの設置を余儀なくされたためそれをよけるようにリズミカルに上下させた天井とした。

 

さらに双方ともに空中階であり、通りから天井だけが見える。セキュリティのために閉鎖的なオペレーションになりがちな福祉施設は内部の雰囲気が窺い知れなくなることが多い。通りからよく見える箇所に造形を与えることは、まちにとっても悪いことではないだろう。

所在地:さいたま市
用途:小規模認可保育園
設計:ツバメアーキテクツ
サイン:氏デザイン
協力:パナソニック ライフソリューションズ社 信井友也(照度シミュレーション)
施工:ルーヴィス
施主:株式会社 Lead Discovery
竣工:2021.03
写真:長谷川健太