ネジ工場の最上階

ディテールの「遊び」から考える

大阪・羽曳野市に拠点を置く、ネジ製造会社の社員食堂設計プロジェクト。ネジ会社ならではの環境を活かし、この食堂のためだけに特殊ネジ製造やオリジナルマテリアルの開発などディテールを追求した設計を行った。社員にとっては普段見慣れているネジであり普通であれば隠されてしまう存在だが、あえて表に見せたり違った使い方を提案するなど改めてネジを視覚化することで、再びネジという存在を意識させることを意図した。

具体的には、ディテールの「遊び」について考えることで設計を進めた。

「ビスの断面削り出し」の天板や、アクリル内部にビスを宙に浮かせた「ビス封入アクリル」の契り(継手)や敷居・天板、光を反射させる「ワッシャー撒き仕上げ」など、この工場で製造される部材そのもののおもしろさを魅せるような笑える、文字通りの「遊び」としてのディテール。

さらにもう一つは、今回は、遠方のプロジェクトということもあり、東京近郊で什器の部材を作り出し、現場で瞬時に組み立てを行うようにした。そのため既存建物の様々な不陸に対応するために、ビスをすべて表にしたり軸同士が簡単にとりあうようにしたりと、現場で調整するためにディテールに「遊び」を持たせている。

今回は建築家とデザイナーの協働であるために、まさに「遊び」がハイブリッドしたようなディテールから全体が出来上がった。

所在地:大阪府羽曳野市
用途:食堂/改装
延床面積:83.1㎡
設計:山道拓人、千葉元生、西川日満里 、鈴木志乃舞/ツバメアーキテクツ+狩野佑真
サイン:狩野佑真
施工:AB工事:日本建産,C工事:月造
施主:粉室製作所
竣工:2019.03
写真:長谷川健太