やわらかい天井の家

架構を重ねる

築30年ほどのマンションのリノベーションプロジェクトである。ゲストルームやウォークインクローゼットとしての個室を二つ残し、残りの部屋をワンルームとしてつなげることにした。

解体を進めると、やたらと太いコンクリートの柱とハリが出現した。この躯体をどう位置付けるかが設計のテーマとなった。家族団欒のためにつくるワンルーム空間が中央の梁で分断されないように、その存在感を調節するべく、全体にふわっとした柔らかい天井をかけることにした。

身近な素材で出来る限り柔かい天井をどのように作るか。ベニヤから歩留まりよく切り出した曲線の華奢な架構を中央の梁に対し455ピッチでかけて行った。背骨と肋骨は不思議なバランスになった。俯瞰でみれば、コンクリートの架構に対し、木や石膏(ボート)を組み上げていった架構が重なって吊られているような状態になっている。

インテリアデザインにおいても、ある種の構造体や架構、モジュールを設計することで、既存躯体を含めた空間の固さ・柔らかさなどを調律できるのかもしれないと感じた。

また、既存躯体の不陸なども調整しながら巨大な曲面を作るために、手仕事の跡が感じられる位には揺らぎが生まれた。その皺が拾う細かな陰影も柔らかさに寄与しているように思える。

鯨のお腹だとか、船の中だとか、いろいろなものを想起するが、躯体に座る巨大な赤ちゃんのおしりのイメージが一番しっくり来ている。

所在地:東京
設計:ツバメアーキテクツ
施工:ルーヴィス
竣工:2020
写真:長谷川健太