新橋のオフィスビル ASOOM新橋

地面から空に伸びる躯体と手触りのある素材

新橋に立つオフィスビルのプロジェクト。家づくりをしてきたクライアントとオフィスビルを考えるにあたってラボ業務とデザイン業務を一貫して行なった。「Office as a Home」のコンセプトのもと、住む場所と働く場所の間を拓くようなプロトタイプとしてのビルのデザインを模索することからプロジェクトが始まった。

 

まず、ビル全体の使われ方において、屋上、路面、地下を質の異なるコモンスペースとして位置付けることで入居者が自身のテナント階だけではなく、ビル全体を使いこなせるような運用を計画した。

 

そしてオフィスの要となる執務スペースは、一般的に執務スペースと分離され暗くなりがちな給湯室の機能を執務スペースの中に配置し、大きな出窓やテーブルセットが置ける大きさのバルコニーに近接させることで、自然光が差し込みつつコミュニケーションの起点となるような場所に転換させ、家のようにリラックスできる空間を目指した。

 

また、各階に配される奥行きのある窓の窓台には空調などが格納され、窓の上部にはブラインドをおろしても柔らかい光がバウンスして入るように庇状の反射板を設けた。それにより躯体素地の天井が明るく照らされる。

 

ファサードは、基部はRCの削り出し、胴部は手前のRC打放しのフレームと奥の左官のフレームが揺らぎながら重なり、頂部は金属製のパネルというそれぞれ異なる質感の素材を積み重ねることで全体にメリハリをつけ、さらにバルコニーがアクセントとして現れる。躯体は地面から空へ細くしていくことで垂直性を強調し、そこに物質ごとの厚みによる複層性が与えられる。近景で見ても遠景から見ても質感やファサードのリズムが感じられるような構成とした。

 

オフィスにおける「窓際」という言葉は一般的に良い意味で使われてこなかったが、ここでは「窓際」やバルコニーが特等席となり、街中からもオフィスで働く人々の生き生きとした様子が窓辺を通じて感じられるような都市建築としてのビルのプロトタイプを目指している。

所在地:東京都港区新橋
用途:オフィスビル
規模:地上14階 地下1階
延床面積:2378.48㎡
設計:株式会社ツバメアーキテクツ(デザイン監修)
株式会社UG都市建築(設計監理)

外構:EN LANDSCAPE DESIGN(植栽)
協力:国代耐火工業所
施工:株式会社植木組
施主:旭化成ホームズ株式会社
竣工:2025年5月
写真:ナカサアンドパートナーズ