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主体性を促すつくり

下北沢は区画整理が進まなかったがゆえに細い路地が複雑に入り組んでおり、そこに個性豊かな小売店が連なることで独特な街並みが形成されている。運営者が思い思いに店舗をカスタマイズする様子が重層的に折り重なる街並みからは都市の活力を感じることができ、歩いていて楽しい。小田急電鉄は地下化によって生まれた線路跡地の開発において、こうした賑わいを引き継ぐ商店街をつくることに決めた。敷地は下北沢と世田谷代田のちょうど中間に位置する。このエリアは第一種中高層住居専用地域と第一種低層住居専用地域の境界にあり、商業エリアの雑多な賑わいと住宅地の落ち着いた雰囲気が混じり合った場所で、周囲には住宅を改装したカフェなどがポツポツと見られる。

全体は、東西約4mの高低差を緩やかに繋ぐ区有通路に沿って、木造2階建ての建物が広場を内包しつつ路地をつくるように5棟建つことで概ね構成されている。そのうち4棟は1階を店舗、2階を住居とした兼用住宅(SOHO棟)で、内3棟が3住戸が連なる長屋である。もう1棟(中央棟)は気積の異なる50~140m2の店舗が組み合わされた商業施設で、共用ギャラリー、シェアラウンジ、トイレ、ゴミ集積所などSOHO棟をサポートする機能を持っている。これらに囲まれた広場は面積の小さい内部空間を補完するように共用の客席としても利用できるし、マルシェなどのイベントも開催できる。それぞれの建物は、片流れ屋根の組み合わせによる外形や分節された外壁、軸組現しの内部空間など、完結的で独立性の高いものではなく、下北沢の街並みのように入居者がまだまだ手を加えられるような雰囲気を残した。さらに、スチールフレームによる庇や鉄筋コンクリートの跳ね出しなど、直接的に店構えに関わる付加的な要素も加え,より乱雑に見えるようにした。しかし完全にバラバラというわけではなく、部分部分では建物を超えて断片的な連続性が生まれるように意識して計画している。

ピカピカの完成品では手を加えづらい。かといって、てんでバラバラでもどこから手を付けてよいか分からない。個体差を持ちながら、共通性を読み取れることが感覚的にその場所の成り立ちを理解する手助けとなって、人の主体性を喚起する。そうして促された使う人の主体性がどんどん重ねられていって、ここがつくり続けられていく場所になるといい。

所在地:東京都世田谷区代田二丁目
用途:兼用住宅・商業施設/新築
規模:木造2階
延床面積:907.4㎡
設計:千葉元生、西川日満里、山道拓人/ツバメアーキテクツ
構造:オーノJAPAN
設備:EOSplus、ジーエヌ設備計画
外構:en景観設計
サイン:COMPOUND
内装監理:千葉元生、西川日満里、森中康彰 /ツバメアーキテクツ
施工:山菱工務店
施主:小田急電鉄
運営:散歩社
竣工:2020.4
写真:山岸剛
掲載:新建築2020年5月号
商店建築2020年8月号