JINS ミーナ天神店

メガネをかけた時と外した時で世界の見え方が変わるように、近づいた時と離れた時で異なる発見がある什器を考えた。

 

メガネが置かれる什器では、LIXILやきもの工房と協力し、メガネのサイズと形状に合わせたゆるやかなカーブのタイルを製作した。メガネのテンプルを受け止めるために設けた、ほんの数ミリのカーブは、近づいたときにはメガネを支える器となり、遠くからみると柔らかく波打つ平面をつくる。

 

本棚やソファなどメガネ以外の什器には、地域の伝統的な焼き物、「小石原焼」を用いた。福岡県朝倉郡東峰村の小石原地区は、標高1000mを超える山々に囲まれた自然豊かな土地である。陶器に適した土質と、登窯の燃料となる木々、水に恵まれていたことから、約350年前から焼き物がつくられてきた。現在は約40窯が残り、同じ土を使いつつ、仕上がりにはそれぞれの窯の特徴が現れる。一般的には器として使われる小石原焼を、平らに成形し、タイルのように貼り合わせる。触れると、飛び鉋や刷毛引きがつくる文様の質感、釉薬の重なりによる滑らかな凹凸に気がつく。離れて見ると、質量のある土のかたまりが浮いているように見える。土の配合や窯内の温度差によって1枚1枚の陶版には個体差が生じるため、ギャップを目地で埋めた結果、目地幅が大きく歪んだ有機的なグリッドが生じている。

本プロジェクトでは8つの窯元とともにオリジナル陶版を製作し、店内に点在する什器によって、地域の色や形があらわれる風景をつくりだした。

所在地:福岡県福岡市
用途:物販店舗、飲食店舗
設計:西川日満里、千葉元生、山道拓人、葉山翔伍/ツバメアーキテクツ
協力:LIXIL やきもの工房
施工:株式会社スペース
施主:株式会社ジンズ
竣工:2023.04
写真:長谷川健太